歯科

ワンデイインプラント ®️について

東京銀座歯科/院長 中平宏
1982年からインプラント治療に携わり、難症例も含め日本有数の症例数と技術の高さに定評があります。その技術の高さから大学病院から手術依頼を受けることもあります。近年はワンデイインプラント®️に力を入れて取り組んでいます。

少ない本数のインプラントで全ての歯を取り戻す画期的な治療

ワンデイインプラント®️とは

インプラントは多くの歯科医師に研究され、様々なエビデンスから長期の安全性も実証されました。長く、快適に使えることから第二の永久歯とも呼ばれています。そのため、保険は適用はされないものの、歯を失った際の治療の選択肢として検討される方も多くいらっしゃいます。

しかし、従来のインプラントは1本の人工物を埋め込み、1本の歯を再生するという方法で行います。そのため、総入れ歯を使用している方など、広範囲に複数の歯を再生する場合、数十本のインプラントの埋入が必要となります。これでは経済的にも、肉体的にも負担が大きく現実的ではありませんでした。
このような問題を解決する治療法がワンデイインプラント®️です。

ワンデイインプラント®️とはどのような治療法ですか?
中平院長:

私が行っている一番大きな柱となる治療で、その日の内に仮歯までを入れるインプラント治療があります。手術をしたその日の内に仮歯を入れて見た目も綺麗になり、強く噛み締めるとまではいきませんが、生活に支障がない程度には噛むことができるようにはなります。
このような治療をイミディエイトファンクション、即時荷重などと様々な呼び名がありますが、特徴的な点はイミディエイトファンクションとサイナスグラフト(骨を作ること)を合わせて行い、一度の手術で済まし治療の回数を減らすことをしており、この治療法を我々は『ワンデイインプラント®』と名付けました。あご全体に少ない本数のインプラントを入れて人工の歯茎や歯を支える方法です。

あご全体を手術する場合、以前は相当な時間がかかりました。初診から完成させるまで、多い場合は100回位の通院が必要になることもありましたが、今では10回ほどと以前の10分の1程度の通院で済むようになりました。このようにワンデイインプラント®は、あご全体という大きな治療に向いている治療だと思っています。

ワンデイインプラント®はどんな患者様にも適用可能でしょうか?
中平院長:

日帰りとは言え、外科手術が必要になるので口腔だけではなく、全身の健康状態を考慮して判断します。そのため、「どんな方でも」とはいきませんが、健康に大きな問題はなく普通の生活が送られている方なら治療可能です。完全に歯を失っていなくても歯槽膿漏で残っている歯がグラグラしている人も適用の対象になります。
その日の内にインプラントを埋めて、仮の歯を入れることができると言うことは、患者様にとって大きなメリットになります。20年以上前までは、その日の内に仮歯を入れることはしていませんでした。しかし、今は殆どの人がその日の内に仮歯を入れることができ、生活が改善される喜びを得ることができています。

外科手術が必要とのことですが、患者様は全身麻酔をして手術をするのですか?
中平院長:

手術は静脈内鎮静法という麻酔をした上で行います。静脈内鎮静法は腕から点滴をし、リラクックスした状態で治療を受けられます。ウトウトしたような状態になり、術中の音はどこか遠くで聞こえているような感覚を覚え、痛みや恐怖を感じずに治療を受けられます。意識も完全に失なうことはなく、こちらの呼びかけに反応ができます。
また、本院は認定麻酔医が在籍しており、術中は麻酔医が全身を管理し、万全の体制で治療を受けることができます。

入れ歯の場合、手術はしなくても短期間で歯を再生できますが、具体的に入れ歯とはどんなところが異なりますか?
中平院長:

確かに入れ歯の方が治療の敷居が低いのは事実ですが、入れ歯は様々なデメリットがあります。
まず、入れ歯は歯茎に乗っているだけでしっかり固定されていません。力を入れて噛む事ができないし、外れやすく、歯茎が炎症して痛みがでることもあります。部分入れ歯はバネをかける隣の歯に負担をかけて悪くしてしまうこともありますし、総入れ歯は異物感も大きいです。
中でも最大の欠点は『骨が痩せてしまう事』です。

骨が痩せるとはどういうことですか?
中平院長:

歯の根の周りは歯槽骨という骨があり、歯をしっかりと支えています。この骨は新しく骨を作る骨芽細胞と、壊死した細胞を取り込む破骨細胞の働きで維持されています。この両者の微妙なバランスが保たれる仕組みは完全に解明されていませんが、骨芽細胞は歯根から刺激が伝わり、その作用により活性化されることが分かっています。そのため、歯が抜けてしまうことで、この刺激がなくなり、バランスが崩れ、骨の吸収が始まってしまうのです。
こうなると噛み合わせが悪くなり、その事による健康面の悪影響が出てしまいます。見た目もシワがよったようにすぼんでしまい、老けたという印象を持たれてしまう口元になってしまいます。また、あごの骨が痩せてしまうとインプラント治療も難しくなります。

歯根からの刺激が歯槽骨を活性化させます

天然歯、インプラントは咀嚼の刺激が歯槽骨に伝わりますが、入れ歯は歯根、または歯根に相当するインプラント体がないので刺激が伝わらない。そのため、歯槽骨の吸収がされてしまう。

骨が薄くなってしまった方の場合、インプラント治療はできなくなるのですか?
中平院長:

最終的な判断は個々の状態を見てからなりますが、多くの方には治療が可能です。ただ、治療をする際に工程が1つ増えてしまいます。
例えば、こちら患者様(図1)の場合、上顎洞(上あご)のケースになりますが、上あごの骨が薄くなっています。CTでシミュレーションした場合、普通にインプラントを埋めると骨を突き抜けているのが分かると思います。

そこで、サイナスリフト(骨造成)という治療法があるのですが、突き抜けてしまう箇所に骨を充填して持ち上げてあげます。(図2)
昔はこの様な場合は腰の骨を取ってきてその骨を移植してインプラントを埋めていましたが、身体への負担も大きいため、今ではハイドロキシアパタイトという素材でできた人工の骨を入れて、インプラントを支えます。なるべく今ある骨を使う、足りない所はサイナスリフトを使って人工骨を入れるなどして、負担を軽くし、日帰りでできる手術にする工夫をしています。

この方は前歯に埋めた3本のインプラントは十分な厚さがある箇所に埋めることができたので、手術当日は、まずこの3本で仮歯を支えました。大体、人工骨が固まるのに半年ほどかかるので、半年後人工骨が固まったタイミングで奥歯も連結した本歯を入れて噛める状態にしました。この様に人工骨を入れる処置をすることで骨が薄い人でも治療ができます。
基本的にはワンデイインプラントは4本のインプラントで支えることができるのですが、骨が薄い場合は、その状況次第で本数を増やす場合があります。

今までの症例では、どの様な方が多かったですか?
中平院長:

多いのは総入れ歯、歯がもう全くない方の症例。そして歯槽膿漏、つまり歯周病ですね。歯周病で歯を抜いてしまった人が多いです。歯周病で歯が悪くなった人は1本や2本で済まず全体が悪くなっているケースが多いです。
遺伝的な原因もあると思いますが、いくら歯を磨いても、綺麗にしても悪くなってしまいこの様な治療の適用になる方は多いですね。
歯が残っていてもグラグラしていて近いうちに歯が抜けてしまうという方も治療の対象となります。このような方は抜歯をし、インプラントに切り替えるのをおすすめする場合があります。

まだ歯が残っている方の場合は抜けるまで待たないのですか?
中平院長:

誰しも自分の歯が失くなることには抵抗があると思いますし、歯が抜かれることを歓迎する方はいないでしょう。しかし、歯がグラグラしているほど進行した歯槽膿漏の場合、歯を支えていた歯槽骨の吸収が始まっています。
インプラントを埋めるには歯槽骨が必要となりますが、自然に抜けるのを待っていると支える骨がなくなってしまうほど状態が悪くなってしまいます。なので、あまり長持ちしない歯なら、残すより敢えて抜いてしまい、インプラントに切り替えた方が良いケースが多いです。
しっかり1本2本の歯が残っていてそれを残す考え方もありますが、残っている歯の方向が悪い、顎全体のバランスを崩している場合は、計画的に抜歯して顎全体を整える、ということも提案しています。

実際に抜歯をした症例を教えてください
中平院長:

こちらの症例になりますが、この方は以前に上顎のみワンデイインプラント®︎にされた方で、下顎はご自分の歯で生活されていました。しかし、歯周病が進行し噛み辛くなってきたので上の歯と同様にワンデイにしたいということで来院されました。
この方は上あごを治療した際はしっかり骨が残っていたのでサイナスリフトの必要がなく4本だけで支えることができました。
下あごについては、残っている歯を抜歯してインプラントを埋めました。この患者様の場合、元の歯を残すこともできましたが、歯のぐらつきも始まり数年後にはダメになることが予測できる状態でした。そのため、患者様に十分な説明をして、ご理解いただいた上で治療へと移りました。

自然の歯を限界まで残し最後まで使うのも1つの価値観だと思いますが、状態の悪い歯を残すことで全体の噛み合わせが悪くなるケースが多くあります。そうならないためにも、あごの骨がしっかりしている内に抜歯して、インプラントに切り替えて新しい充実した生活を送られた方が良いという意見もあります。


治療が終われば自然の歯と同じように生活ができるのですか?
中平院長:

治療後は急激に口の中の環境が変わるので新しい環境になれるリハビリ期間が必要です。私たちが物を食べるとき、あごは上下左右複雑に動き下もそれに応じて舌も複雑な動きをします。入れ歯になれるまでに時間がかかったように、ワンデイインプラントもなれるまで少し時間がかかります。
また、患者様の中には治療が終わると安心して全てが解決したと思ってしまう方がいます。インプラントは一生物と言われますが、どれくらい長持ちするかは設計や埋入技術、全身の健康状態、口の中の衛生状態で異なります。
治療後の歯を長期的に快適に使うには、患者様の日々のケアと半年に1回ほどの歯科医院によるメンテナンスを受けるのを推奨しています。なので、治療とメンテナンスはセットであると考えてください。

インプラントを長持ちさせるにはどのような点に気をつける必要がありますか?
中平院長:

主に意識することは、リハビリ、ほどよく噛むこと、生活習慣の改善、プラークコントロールです。

インプラント治療後に気をつけること
リハビリについて

上述しましたが、口の中の環境が大きく変わり違和感を覚える方がいます。長年入れ歯を使っていた方は入れ歯に適したあごの使い方を無意識にしている例もあります。鏡を見ながら大きく口をあけて発音してみたり、本を朗読してみたりして、少しずつ慣らしてください。

ほどよく噛むことについて

「よく噛む」とは「強く噛む」という意味ではありません。走ることに例えるなら、短距離走のように力いっぱいで走るのではなく、風を感じながら気持ちよく走るジョギングのようなイメージです。歯をいたわりながら、咀嚼回数を増やして食事するように心がけてください。

生活習慣の改善について

重い歯周病を患った方は生活習慣を改善したほうが良いと思われるケースが見受けられます。特に喫煙には気をつけてください。
喫煙は様々な健康被害があるのが知られていますが、歯周病を進行させてしまうこともわかってきました。歯周病はせっかく埋めたインプラントが脱落してしまう原因にもなるので注意してください。

プラークコントロールについて

インプラントは虫歯になることはありませんが、インプラントの周りに歯垢や歯石がたまると、『インプラント周囲炎』という炎症を引き起こします。インプラント周囲炎になると歯槽骨が溶けてしまい、自然の歯と同じようにインプラントが欠落するリスクがありますので、毎日の歯磨きを欠かさずに行ってください。

最後にワンデイインプラント®治療を検討している方にコメントをお願いします。
中平院長:

歯のことで悩んでいる方は是非一度ご相談ください。患者様の中には歯が悪くなったのは自分のせいと、必要以上に自分を責めてしまう方がいます。しかし、歯が悪くなるのは恥ずかしいことではありません。歯が悪くなる原因は多種多様で中には遺伝的な要因もあり、決して患者様のせいだけではありません。
歯科医師として多くの方を治療して、表情が明るくなり、若々しくなった方を何人も見て来ました。
「自分が悪い」「恥ずかしい」「どうしてこんな風にしてしまったのだろう」など、後ろ向きの気持ちを抱くより、治療をして前を向いて歩き始めませんか?

東京銀座歯科
院長 中平宏 Hiroshi Nakahira
編集より

この度は、インタビューにご協力いただき感謝申し上げます。 総入れ歯など、歯を多く失った方でもワンデイインプラント®️なら再び歯を取り戻せるというのは魅力的な治療と思いました。歯のことで悩んでいる方にこの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

<協力>
東京銀座歯科
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